クロストークVol.1「ぐう」を生んだ幹部二人が語る
ユニバーサル・ダイニングの
誕生秘話

ユニバーサル・ダイニング
代表取締役社長
呉 成煥
2007年、東京・八重洲に焼肉店「炭火焼ホルモン ぐう」を出店。店舗数を順調に増やし、2018年、門前仲町に新業態の大衆酒場「もつ焼よし田」をオープン。現在、両ブランドあわせて11店舗(直営店)を経営する。
ユニバーサル・ダイニング
飲食事業部ゼネラルマネージャー
吉田 隆行
約30年にわたり、数々の飲食企業で組織の成長に貢献し、2005年に飲食のコンサルタントとして独立。2014年よりユニバーサル・ダイニングの運営に参画している。「もつ焼よし田」の店名は同氏の名前が由来。

飲食店を経営する
正しい組織を目指したい

店舗数を順調に増やしていたのに、
コンサルタントを招いた理由を
教えてください。

呉

「炭火焼ホルモン ぐう」は不動産会社が素人目線で始めた店。お客様はたくさん来てくれていたけど、飲食店の正しいあり方を誰も理解していませんでした。調理や接客のマニュアルもなかったし、あらゆる面で無駄も多かった。本気で変えないといけないと思ったのは、ある従業員からの「私の給料はいつになったら上がるのですか」という素朴な疑問でした。それまでは昇給のルールさえ明文化されていませんでしたから、このままではいけないと思ったわけです。

吉田吉田

それで私に声が掛かりました。私は1977年に新卒ですかいらーくに入社。当時、日本の外食産業はこれから伸びていくという時代で、すかいらーくより先に進んでいる会社はありませんでした。ですから、何もない原野を整地して、線路を引いて機関車を走らせるといった形でチェーン化を進め、組織を大きくして飲食業を代表する企業へと成長させていったのです。退職後は他の飲食企業の経営にも関わり、その時に思ったのが小さな店から始めて会社組織を目指す人たちは、みな間違いなく同じ失敗を繰り返すだろうということ。それは無駄だしもったいないと思い、コンサルタントとして独立しました。

呉

当時、別のコンサルタントに来てもらっていたのですが、月に数回の頻度しか会うことができずこちらの対応力にも問題があったので、思うようなスピードでは改善が進みませんでした。常勤してくれる方を探しているときに、ちょうど縁があって吉田さんと知りあうことができました。

吉田吉田

私もやるなら組織の中にどっぷり浸って最善を尽くしたい。常勤したいというのは私からのお願いでもありました。「炭火焼ホルモン ぐう」にはそれだけの可能性を秘めていたということ。まずは料理が美味しい。それに加えて、呉社長や従業員が「炭火焼ホルモン ぐう」という店を本当に好きなことが伝わってきた。この店を大きくして、ちゃんとした会社にしたいという熱意が伝わり、私も本気で取り組もうと思ったのです。

吉田さんが運営に加わった当時、
ユニバーサル・ダイニングは
どんな会社でしたか。

吉田吉田

飲食店としての重要な要素が10項目あるとすれば2項目くらいは徹底的に出てきていましたが、それ以外のことは本当に分かっていませんでしたね。最もできていなかったのは教育の仕組み。つまり部下を育てていくということなのですが、店舗を増やして会社を大きくしていくということは、自分以外に自分と同じくらい仕事のできる人間をつくらないといけないということ。

呉

「いいか、こうやってこうして…とにかくお前やってみろ!」みたいな教え方でしたからね(笑)。一般的に飲食店のオーナーは現場を経験した人が多いので、必要なノウハウを持っている人が多いのですが、「炭火焼ホルモン ぐう」は不動産会社が始めた店。しかし、やる気のある人たちがいればできるんだって思いました。

吉田吉田

ちゃんとできていた2項目というのは、みんながいいお店にしたい、お客様にいい思いをさせてあげたいという気持ちが十分にあったこと。しかし、お客様に対するサービスもルール化されていないから、やり過ぎる人もいれば足りない人もいる。そこを標準化する必要はありましたね。

呉

当時はそんな素人集団がやっていても、5店舗まで増やすことができました。けれど、私はフードコスト(材料費)とレイバーコスト(人件費)というFL値すら知らなくて、飲食店経営のセミナーに行ったりWebで調べたりして、ようやく何のことか分かるようになってきた。それを現場の人間に伝えても、「何ですかそれ?そんなこといいから自由にやらせてくださいよ」という返事が返ってくるレベルでした。

数字に向き合い、働く環境を
変えたことで大きく成長

その後、ユニバーサル・ダイニングは
どのように変わっていったのでしょうか。

吉田吉田

お客様からいただいた売上がいくらあって、それに対して自分たちがいくら使って、その結果いくら残ったのかを追求するのは当たり前。この残った金額が少なければ、なぜ少ないのかを追求しなくてはいけないし、お客様の数が少なければ理由を突き止めて対策をしなければいけません。つまりPL(損益決算書)を細かく分析するわけですが、店長クラスがその重要性を理解するようになり、粗利率は半年くらいで改善していきました。ほかにも教育のシステムや従業員の働く環境の見直しなど、会社全体のことを任されたので、改善していくスピードは早かったと思います。

呉

働く環境でいえば、例えば長く働いていることが頑張っているみたいになっていた。でも本来8時間で終わる仕事に対して9時間費やしていたら意味がないし、なぜ時間がかかるのか、その原因も追求しなければいけない。そんなこともあって、店の営業時間を1時間縮めて労働時間も短縮。これまで月4~5回だった休みは、週休2日制を導入しました。人の心を変えるのは時間がかかりますが、制度は簡単に変えられる。社員が安心して長く続けられる会社にするために、変えられるところから早く変えていきたいという思いからでした。

吉田吉田

会社を大きくするために、昔はとにかく死に物狂いで頑張ろうよと、泥のように働いていましたが、今はそんな時代ではありません。従業員ひとり一人の工夫できちんと利益を出して、みんなの給料もよくて十分に休めて、なおかつお客様も従業員も嬉しい。そんな会社を目指さなくてはいけません。

会社を変革して行く過程で
大変だったことはありましたか。

吉田吉田

やはり一部の従業員から反発はありました。とにかくやったことのない作業や仕事ばかりだったので、受け入れてもらえるまで最初の一年は大変でした。ただし、一方で多くの従業員は、働く時間が減って休みが増えるのは賛成だし、給与体系が変わって明確なルールで自分の給与が上がっていくのは嬉しいはず。最終的には従業員の行動が変わっていきましたね。

呉

PLを考えること自体は難しいことではないのですが、聞いたことがない言葉が出てくると、どうしても人間は拒否反応を示してしまいます。なぜ数字を分析しなければいけないのか、その数字を改善するには何をしなければいけないのか。そこは地道に説いていくしかありません。何度もしつこく説明したので、みんな辛かったと思いますが、今では売り上げや客単価、経費、仕入れなど、数字に対する意識は劇的に変わりました。

お客様も従業員も幸せになり、
永続できる会社を目指して

今のユニバーサル・ダイニングの
強みは何でしょうか。

吉田吉田

ようやく11店舗を経営する飲食企業の社員らしくなってきた。4年前は何を考えているのか分からなかった人たちが、4年間私にしっかり付き合ってくれたおかげ今ではリーダー格へ成長。彼らは間違いなく財産だし、彼らが育ってくれたことが大きな強みだと思います。今後5年後10年後も期待できるし、ようやくチームができて、運営の核となる部分がしっかり確立したという状態です。

呉

彼らにはまだまだ物足りないところはありますが、成長してくれたおかげで私の仕事もずいぶんと楽になりました。会社としてはPOSや発注、予約、情報共有など、さまざまなシステムが整ったし、従業員が育ってきたからこそ店舗数も4年前に比べると倍以上に増えた。まるで違う会社に生まれ変わったという印象です。

ユニバーサル・ダイニングは
これからどんな会社を目指していきますか。

呉

観念的な目標を立てても意味がないので、年間売上20億円の企業を目指すと公言しています。20億円のうち純利益が10%取れれば内部留保も貯めていけるし、誰かが独立したいとなっても応援してあげられる。つまり、利益や店舗数の拡大のみを追求するのではなく、みんながハッピーになれて会社が永続していくことを目標にしているわけです。

吉田吉田

そのためにはまずは土台づくりが重要ですね。これまで私たちが教育して育てたリーダー格の人たちが、今度は自分の部下に同じことを教えることができるようになれなければいけない。今はリーダーらしき人が、組織の上にちょうど浮き上がってきたかなという状態なので、これからが正念場。気を付けているのは、従業員に対して難しいビジョンや理念を掲げるのではなく、優しい言葉で伝えること。いい店をつくることで僕らも幸せになれるし、お客様も楽しく過ごせるし、結果的に会社がよくなる。だからとにかくいい店をつくろうって伝えています。

最後に、どんな人材に
入ってきてほしいと思いますか。

吉田吉田

幸せになりたいと本気で思っている人ですね。言い換えると、何かになりたいとか何かをしたいとか、志をしっかり持っているかどうか。トレーニングでもスポーツでも何でもそうですが、ここを乗り越えてここを目指すんだという強い思いがないと厳しい。それは会社の発展でなくてもよくて、個人的な思いでもいいわけです。結果的にみんなの夢が実現できれば、同じ屋号でやってもいいし、独立して違う屋号でやってもいいと思っています。

呉

そうですね。だから、私は上場して会社を大きくしようとかではなく、みんなが幸せになるには会社をどうすればいいのかを重視しています。みんなが幸せになるために、こんなことをしようよって一緒に手を取り合っていける人たちなら大歓迎です。

吉田吉田

今の人たちが何をもって幸せなのかはいろいろありすぎて、とりあえず食べていければ十分幸せという人もいれば、年に2回は海外旅行しないと幸せと思えない人もいるかもしれません。そのためには個人の思いをもとに計画して実行できる人じゃないと。だからどこを目指すのか、何をしたいのかというのが必要なのです。

呉

そのようなことが叶えられる仕組みをつくろうとしているわけですが、入ってきてくれる人は必ずしも若い人でなくてもいい。それこそ50代でも、こうなりたいという強い思いがあれば一緒に頑張ることができます。ぜひそんな人たちに来てほしいですね。

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